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トピックス# 87: プライバシー権・犯罪歴・削除請求
R07.1.25
 インターネット上に犯罪歴等の情報が掲載されると、これを消去することが困難となり、本人の更正、社会復帰の障害になることは否定できません。 判例が「その者が、有罪判決を受けた後あるいは服役を終えた後においては、一市民として社会に復帰することが期待されるのであるから、その者は、前科等にかかわる事実の公表によって、 新しく形成している社会生活の平穏を害され、その更正を妨げられない利益を有するというべきである」と指摘するとおりです(最高裁平成6年2月8日判決)。 ところが、インターネット上の検索事業を提供するグーグルに対して自己の逮捕歴の検索結果の削除を求めた事案について、裁判所は、当該事案を公表されない法的利益と、 検索結果を提供する理由等諸事情を比較衡量し、公表されない法的利益が優越することが「明らか」な場合に削除請求が可能、という判断基準を示しています(最高裁平成29年1月31日決定)。 同決定によれば、この判断基準は、プライバシーの保護の要請と、検索事業が情報流通の基盤として果たす大きな役割や検索結果の提供が検索事業者による表現行為の側面を有することなどを勘案した上での結論 であるとされています。そして、当該事実(児童買春)が社会的に強い非難の対象であり、検索結果の伝達範囲がある程度限られていることなどの諸事情に照らすと、 その後の犯罪歴がなく5年前後経過したことを考慮しても、公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえないと判断しました。
 この判断基準は、「情報流通の基盤として大きな役割を果たしている」とされるツイッターに関する判例にも引き継がれ、「明らか」要件が付加されています (東京高裁令和2年6月29日判決)。ただし、掲示板やブログの投稿などに関する削除請求であれば、「明らか」要件はつきません。そのため、ある程度の期間経過があれば削除請求は認められます。 また、嫌疑不十分を理由とする不起訴事件については、原則として削除決定が発令されています(東京高裁平成30年8月10日決定、札幌地裁令和元年12月12日判決)。

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